ヒマのすすめ 2006/12/01 
ノンビリ時間が、本当の「ゆとり教育」と、拙著に書きました。「ゆとり教育」という言葉をはじめて聞いたとき、当時パリで暮らしていた私はこう思ったのでした。子供たちが時間にせかされることなく、ノンビリ過ごせるようになって本当によかったと。

「人間はなにもしていないときに、考える」と、私の大好きなラ・フォンテーヌ先生がおっしゃってます。ルイ14世と同世代の詩人で、ギリシャ時代にイソップが残した物語を「ラ・フォンテーヌの寓話集」として集大成。今でも小学校に上がった子供が最初に暗礁する、「ネズミとライオン」や「キツネとカラス」などがそれです。同じイソップでも、私たちが子供のころ親しんだものとラ・フォンテーヌのそれでは、解釈がまったくちがいますが、それについては後日にお話しますね。

話がそれましたが、「人間はなにもしないときに考える」という一文をみつけて、欣喜雀躍。スケジュール表をなるべく白紙にしておきたい私は、ヒマにしていることに自信を持ったものです。ところがわが国には、それとは反対に、「小人閑居して不善をなす」という諺があります。ここでいう小人とは、私たち一般人のことで、対する君子は為政者。為政者にしてみれば、ヒマだとよからぬたくらみをする小人は、忙しくさせておいた方がいいわけです。この場合のよからぬことに、ものを考えることも入ります。

為政者がまともで、一般庶民はなにも考えなくても安泰だった時代はそれでよかった。ところが世の中に暗雲たちこめ、自己責任が問われる現在。ものごとをよく考えて、自分と家族が幸せに暮らせるためにベストの選択を迫られる時代です。なのに、考えるためのヒマも時間もない……。どうぞ、「人間はなにもしていないときに考える」という一文を思い出して、ヒマにしてください。忙しくて気がつかなかったことが、ほらみえてきますよ。