いとしのマドレーヌ 2007/07/15 

ふっくらしっかり、艶やかに焼き上がったばかりのマドレーヌを手のひらに乗せたときの感触は、焼き菓子にこだわったご褒美かも。ほっかり二つに割ると、なん本もの気泡が、盛り上がったおヘソ部分に向かって斜めに走ります。『成功!』と、厨房の隅でニンマリ笑っている私がいます。

同量の粉と卵とバターとお砂糖を混ぜて焼くカトル・カールとマドレーヌが、焼き菓子の双璧。そう決めたのはこの私で、異論がおありの方もいらっしゃることでしょう。クッキーもフィナンシエも焼き菓子なのですから。そこでこう申し上げれば、みなさまもきっと納得してくださることでしょう。カトル・カール、略してQQとマドが、当店、ジョルジュ・サンドの主力商品ですと。

開店準備のさなか、スタッフ全員で頭を抱えてしまいました。私のレシピのどれを試しても、これぞというマドができなかったからです。コメットという最新式の業務用オーブンと、使い慣れた家庭用のそれのちがいなのか。料理大辞典のラルースをはじめ、手持ちの参考書を総動員して、美味しいマドを作らないことには夜も日も明けない思いでした。そして散々考えたすえに非常識の誹(そし)りを覚悟で、親友の腕っこきパテシエの木村成克さんに電話で泣きついたのでした。

そして翌朝、いくつかのアドバイスと一緒に教えてくださったレシピで、待望のマドが誕生。木村さん秘伝のマドは、パリの一流店に並べても遜色のないお味。スタッフ一同の驚喜したことといったら、そのときの女四人の姦しさをご想像ください。この機会に、スタッフをご紹介しましょう。販売、経理、人事などすべてを管理する恵子ちゃん、パティシエールの真弓ちゃんと裕子ちゃん。どうぞ末永く、GSをお見守りください。