世界一やっかいなフランス人 2007/10/15 

テレビ大好き人間の夫が、「SMAP X SMAPにアラン・ドロンがでるよ」と、教えてくれました。とくべつファンではありませんが、わが国のバラエティーに出演するドロンは見逃せません。その晩のキムタクたちとの受け答えや立ち居振る舞いは、まさに私の期待どおり。番組のなかのドロンは、フランス人そのものでした。

どうフランス人らしいかといえば、いちいちくどい。ドロンがリクエストするお料理をキムタクと草薙クンのそれぞれのチームが作り、技とお味を競います。前菜はパスタでメインがブイヤベース、デザートにスフレがあの晩の課題でした。そこそこ美味しく仕上がったお料理を、ドロンが採点。『太陽がいっぱい』のころの端整さは望むべくもございませんが、老いてなおチャーミングなドロンさまでした。

肝心の、どこがどうくどいかについて申しましょう。ふたチームが作るお料理はどれも及第点でしたが、試食するドロンがいちいちこう付け加えました。「美味しいけれど、僕はたのんでいない」とか「美味しいけれど、本来のブイヤベースではない」と。彼らのやり取りを観ながら、私にある記憶が蘇りました。サッカー日本代表チームの監督をしていた、トルシエを覚えておいでですか?

だいぶ時間がたちましたが、拙著に『異端児トルシエ』というのがあります。トルシエ番の仏人スポーツ記者が書いたものの翻訳でしたが、そのなかでヒーローの中田選手が、通訳にこう聞くくだりが印象的でした。「フランス人って、みんなトルシエみたいなのですか」と。キムタクの表情に、そんな中田の言葉がぴったり重なります。そして私は、こう思ったものです。あんないけずなフランス人相手に、よくまあ20年もパリで暮らしたものだと。もちろん、いけずで面白い彼らでもありました。次回はドロンが本当に食べたかった、マルセイユの本格ブイヤベースの、超簡単な作り方をご紹介しましょう。