黒田アキさんのこと 2008/03/15 

アキさんとおっしゃるこの方は、男性です。1985年ごろ、ポンピドゥー・センター近くのカフェで、はじめてアキさんの作品に出会いました。群青と赤が基調の絵画に見入っていた私の横にカフェのオーナーがいらして、こうおっしゃったのです。
「Akiを知っているでしょ?」

しばらくして、購読していたル・モンド紙の文化欄に黒田アキの記事をみつけたときは、わがことのように嬉しかった。南仏のサン・ポール・ド・ヴァンスに大きな美術館を所有する、マーグ財団の秘蔵っ子だということを、その新聞を読んで知りました。アキさんと実際にお会いしたのはそれからさらに数年たった、90年代に入ってからのことでした。

前置きが長くなりましたが、アキさんがこのたび東京ドーム・ホテルのお仕事で来日。大がかりなプロジェクトのかたわら、アキさんの従兄弟が管理するギャラリーで個展をすることになりました。それがなんと、GSから徒歩数分の赤城坂下なのです。華やかな神楽坂の下側で、古くから印刷所や製本工場ひしめく赤城坂下に、アキさんの作品を所蔵するギャラリーがある意外さがなんとも素敵。そういえば、NYのソーホーもパリのバスチーユも、もともと瀟洒な町ではありませでしたもの。アキさんのギャラリーの出現が契機になって、赤城坂下、正確には西五軒町あたりが一大アート村になりそうな予感がします。

最後に、GSのことも少しだけ。個展のオープニング前夜をフランス語でヴェルニサージュvernissageといって、有名無名を問わず、なるべく大勢の方に作品のお披露目をします。先にも申しましたように、アキさんの個展会場はGSの目と鼻の先ですから、ヴェルニサージュはGSでということになりました。といっても私が用意するのは、大量の赤ワインと手軽なおつまみ。神楽坂のGSにいらした方でアートにご興味がおありでしたら、アキさんのギャラリーにお寄りくださいね。