ラ・フォンテーヌを知ってますか? 2009/03/01 

フォンテーヌは泉のことですが、ここでいうラ・フォンテーヌ La Fontaineは、17世紀に活躍したフランスの詩人です。美貌の女流作家のセヴィニェ夫人の親友で、Jean de La Fontaineでわかるように、姓と名の間にある de が貴族の家柄の証拠。それではお話をすすめる前に、なぜ今ここでラ・フォンテーヌなのかについて、ご説明しましょう。

小学校に入った子供がまず暗誦させられるのが、フランス版イソップ物語の「ラ・フォンテーヌの寓話」です。もとはたしかにギリシャ時代に実在した才人、イソップの物語ですが、ラ・フォンテーヌ先生の解釈は私たちが幼いころ親しんだそれとはまったくちがいます。そこには「桃太郎」もいなければ、「金太郎」もいません。両方とも古すぎるとおっしゃるなら、ぐりぐらでどうですか? 勧善懲悪とか雨にも負けず……的な発想では太刀打ちできない、ひねりがきいたラ・フォンテーヌの世界が、フランスの子供たちに用意されているのです。

書は心の糧のたとえを持ち出すまでもなく、幼くして読んだ童話の世界の影響は後の人生観を支配します。ラ・フォンテーヌのイソップに、私たちが今より快適に暮らすヒントがたくさんありそうな気がします。かといって私を、誤解しないでくださいね。フランス人の考え方を絶賛しているのではなく、驚きと笑いのひとときを提唱したい。たとえば、木枯らしをさまようキリギリスが、アリの家のドアをたたく場面はこんな調子です。
アリのおばさん:夏はなにをしていたのかしら?
キリギリス君:歌ばかり歌ってました。冬になって、あたりに食べ物がなくなるとは予想もしませんでした。
アリのおばさん:あっそう。夏は歌っていたのなら、冬は踊っていればいいじゃない。
良し悪しはともかく、こんなにちがうんですよ。