寒い日は熱々オニオン・グラタン 2010/01/15 

繰り返しますが、料理はインスピレーションです。手の込んだ懐石やフレンチを作るのが職人力なら、素人料理を美味しくするのが想像力。オニオン・グラタンは、エミール・ゾラが小説に描いたパリの味。『居酒屋』や『ナナ』に出てくる人々の、喜怒哀楽と怨念がどろどろに絡み合うドラマを生んだ町の味がします。

といってもそれは、クノールの即席スープということはあっても、パリっ子が自宅のキッチンで作る料理ではありません。ゾラの小説の舞台になった中央市場は40年前、郊外のランジスに移転しましたが、ふと迷い込んだ路地裏に漂う、玉葱とチーズの匂いがそれです。前置きはこのくらいにして、中央市場を意味するレ・アル les Hallesが地名に残るあたりの情景を心に描きながら、オニオン・グラタンに挑戦。まず玉葱の皮をむいて、泣いたふりして刻みましょう。それにしても、先回の『お金をかけずに食を楽しむ・・・』で、オニオン・グラタンについて触れなかったのが不思議です。原稿を書いていたのが春だったせいで、忘れてしまったようです、ごめんなさい。

玉葱のカットは、繊維に垂直でも平行でもかまいませんからたくさんご用意ください。玉葱をあめ色になるまで炒めるのは手間がかかるようですが、コツがわかればとっても簡単。多めの油と玉葱を入れたお鍋を強火にかけ、そのままほっておいて焦がせばいいんです。底の部分が焦げて黒くなったら、しめたもの。お鍋にじゃーと水を加え、数分間ぐつぐつ煮立ててください。焦げた玉葱の黒い部分と鍋底にこびりついた焦げた部分が水に溶け、お鍋の中身全体があめ色に変身。コンソメやお塩で好みの味にしあげ、チーズをふってグラタン風に焼いてお召し上がりください。煮詰めて濃縮して、冷凍しておくと便利ですよ。