ゆたかな暮らし 2010/02/15 

GSをはじめて、よかったなと最近になって思います。GSは私が2007年の夏にはじめた焼き菓子屋の店名、「ジョルジュ・サンド」の略です。オープンして三年ちかくたった今になってよかったも、ないものだとお思いになりますか ? だとしたら、そうではなくて、「よかった!」としみじみ思う今日このごろなのです。

なにがいいかといって、読者さんとの出会いがうれしい。そして遅ればせながら、あることに気がつきました。読者さんとお会いしたときの気持ちが不思議と、デジャ・ヴュなんですよ。Deja-vu とフランス語でよくいう、既視感を意味する言葉に似ています。GSの二階の、喫茶スペースに流れているBGMが、フランス音楽だからでしょうか ? パリの蚤の市にあるようながらくたが、そこらじゅうに転がっているからでしょうか ? さんざん考えたあげくに、こんな思いにいたったのでした。そうそう、フランスの地方で出会った人たちのだれもがただよわせていた、相手を包み込む自信にみちた雰囲気にそっくりです。

松江からいらしたマダムが、こうおっしゃいました。
「まるで冬ごもりしてますが、寒中にローズ・マリーの花が咲いてます」
大分のマドモアゼルが、こういって私を笑わせてくれます。
「おサルさんが縁側で食べようと思って山から持ってきた柿を、母が横取りしたんですよ」
福岡の町中で長くしていたご商売を閉じ、田舎暮らしをはじめた奥さまがトライするという、オリーブ検定の話をしてくださいました。
雪に埋まっていた長ネギの白い部分を茹でたら、めちゃめちゃ美味しかったと聞いて、北海道に飛んで行きたくなりました。

「パリには美味しいものがないでしょ」と、言い切っていたフランスの地方で暮らす人たちの顔が浮かんでは消え、読者さんたちがつづきます。地方なら激しく家庭的に暮らせるかもと、私のイマジネーションはとどまるところを知りません。