愛だけがたよりのパクス制度 2010/03/01 

わが国になくてフランスにある制度はいくつもありますが、今日はパクスについてご説明しましょう。パクスこと、Pacte civil de solidariteを邦訳すると連帯市民協約になります。婚姻と内縁関係のあいだのようなものですが、カップルは男女にかぎりません。性別に関係なく成人したふたりが安定した、持続的な共同生活を営むためにかわされる契約です。

それってなに????? 性別に関係なくということは、ホモセクシャルもレズビアンもありなの???? と聞かれたら答えはイエス。95%が男女のためですが、あとの5%は男同士か女同士。カトリック教会の神父さまの前で、永遠の愛を誓うわけでもありません。家族手当や育児手当などの社会保障も、正式に結婚しているカップルとおなじです。出生率1.99で、婚外出産が53%にのぼっている数字の裏にパクス制度ありといっても過言ではありません。

もちろん、それなりの制約もあります。たとえば、一緒に暮らしている期間や財産、経済状態を証明する書類などを用意する必要があります。相手に夫や妻がいるような不倫関係はもってのほかですし、パクスにも細かな規定があります。それでは婚姻とおなじではないかといわれそうですが、知れば知るほど両者はちがいます。どこがちがうかといって、契約の成立と解消の仕組みが、結婚とくらべものにならないほどかんたん。たとえば、婚姻届とちがってパクスなら、届け出と解消に証人はいりません。時間とお金をかけた従来の離婚劇から解放され、子供を連れてパクスを繰り返す男女の存在が、むしろユーモラスなほどです。いずれにしてもパクスで大切なのは、一重におたがいの愛。知れば知るほど私たち日本人にパクスは、なじみにくい制度のような気がしませんか?