はじまりは終わりのはじまり 2010/08/01 

日いち日と秋に近づいていると思えば、この猛暑も凌げそうです。GSの前にならべた植木鉢のアイビーが生い茂り、あたりはまるで亜熱帯のよう。大都会の路地裏に育つ、青々とした植物を眺めて、なのになぜ野菜が高いのかしらと首をひねる私。そういえば以前よくあった巨大ズッキーニにも、最近とんとお目にかかりません。スーパーの生鮮棚のピーマンも小さいし、どうしたのかしら。野菜人気のせいだなんて、まさかね。それでは今日は、フランスの野菜料理についてお聞きください。

肉食のフランス人ですが、野菜の食べ方も相当なもの。サラダといえば、単品野菜が定番。たとえば人参のサラダなら、人参だけをスライサーで千切りにします。セロリのサラダなら、セロリだけをお皿の真ん中にうずたかく盛る。素人は野菜を切るのにまな板を使わず、手の中で切ります。料理人でもないかぎり、包丁だけで千切りは無理なのでスライサーを多用。また、生野菜ばかりでなくて茹でた野菜も、れっきとしたサラダです。たとえばジャガイモのサラダなら、茹で立ての賽の目に切ったジャガイモをドレッシングであえる。仕上げにパセリかあさつきのみじん切りを振る。長ネギもしかりで、使うのは長ネギの白い部分だけ。南仏料理のラタトゥイユがいい例ですが、肉のこま切れなどもいれません。そもそもフランスのふつうの肉屋さんにハムはあっても、薄切り肉はありません。ひき肉は牛だけで、豚も鶏もありません。ペット用のひき肉もとうぜん牛で、豚も鶏もなしです。

野菜の話が肉になってしまいましたが、パリでスキヤキやしゃぶしゃぶが食べたければ、塊の牛肉を買って半冷凍にして自分で切ります。日本食店に行けば薄切り肉が売られてましたが、お値段は倍ほどに跳ね上がる。冷たいし硬いしで、牛肉のスライスはちょっとした労力でしたが、諦めが肝心。そうです、外国で暮らす必須条件は語学ではなく、飽くことのない忍耐にちがいありません。