気の弱いウサギさんの驚き 2011/1/1 

ウサ子ちゃんもウサ太くんも、かわいいですね。見た目とは裏腹に、飼ってみるとあんがい凶暴らしい。ソファでも柱でも齧ってしまうし、鼻息もなかなか荒いとか。それでもふかふかしていて、やっぱりラブリー。今日は干支にちなんで、ウサギのお話をしましょう。私が心酔する、ラ・フォンテーヌ先生の寓話に登場するウサギの話をお聞きください。

その前にラ・フォンテーヌ先生について簡単にご説明すると、17世紀フランスの詩人です。ギリシャ時代に実在した才人、イソップが残した物語を寓話集として集大成。フランス人に読み継がれ、今でも子供が小学校に入るとまず国語の時間にラ・フォンテーヌを暗唱させられます。ほとんどの物語の主人公は擬人化された動物で、それぞれにキャラが引き立っている。たとえば、キツネはあくまでもずる賢いという具合に。肝心のウサギはといえば、弱虫の代表です。

心配すること以外にすることがないような、気弱なウサギが巣の中で悩んでおりました。「なんと惨めなんだろう。こんなに浮かない気分では、からだにいい食べ物をさがすこともできやしない。人生の本当の歓びを知らないまま、心配で眼を開けたままで眠らなくてはならないなんて、僕はなんと不幸なんだ」

ところがある日、池のそばにいたときのことでした。ウサギはかすかな音に驚いて、巣に逃げ帰ろうとして、あることに気がついたのです。
「あれあれ、おかしいぞ。僕の姿に驚いてカエルたちが、いっせいに池に飛び込んだじゃないか。僕に驚いて、僕に恐れをなして、逃げていくやつがいるなんて。いったい世界はどうなっているのかしら。弱虫な僕にも、カエルたちを驚かす力があったなんて。世の中、不思議なことがあるもんだ」
そう思ったとたんウサギに、元気が湧いてきました。「だれにでも、もっと弱い者がいるものだ」と、ラ・フォンテーヌ先生はにんまり。さっそうと生まれ変わったウサギが、今年の私たちの見本です。