お祭り上手なフランス人

2011/11/1 

今さらボージョレ・ヌーヴォー(ここでは略してBN)もないでしょうといわれそうですが、解禁日は以前、11月15日でした。フランス人の中には、今でもそう思い込んでいるご老人がけっこういます。11月の第三木曜日になったのは、1985年からのこと。11月15日が日曜ですと、お店が閉まっていてBNが売れません。木曜日に買って金土曜日に飲む習慣が生まれ、売上が急増。マスコミが打ち出したキャンペーンも成功。それでもパリのビストロやカフェで、「ボージョレ・ヌーヴー到着!」のポスターが目立つようになるには、数年かかりました。

BNの定着とともに、フランス人の取り柄にイベント上手が加わった気がします。時間がたちましたが、98年のワールドカップ優勝年からことごとくイベントが盛り上がり、パリの音楽祭や革命記念日の騒ぎはエスカレートするばかりです。話をBNにもどしますと、大地を意味するテロワールと、気候風土を意味するクリマから生まれるワインは、農業国に生まれたことを誇りにしているフランス人の矜持。ワイン評価では隣接するブルゴーニュ地方にかなわないと諦めていたボージョレ地区の作り手さんたちは、ジョルジュ・デュブッフというカリスマ仕掛け人を得て大ブレイク。バカンスからクリスマスまで、大したイベントのないこの時機にBNは、人々の心の活性剤にもなりました。

もともとBNは、フランス人にとって縁起物のようなもの。一部のワイン好きに限られましたが、私の記憶ではBNのお祭り騒ぎは、日本の方が先でした。わが国の場合、時差の関係で世界で一番早くBNが飲めるまではよかったのですが、ここ数年のように解禁日が前倒しになっては本末転倒。お祭りですもの、11月の第三木曜日だから価値があります。「より早く飲める」は無意味どころか、BNの命取りになったかも。もっとも、日本がダメでも中国があるさといわれるかもしれませんし、今月がみものです。「とっくの昔に、BNは飽きた。今は安くて美味しい日本のワイン」とおっしゃるお声も聞こえます、パチパチ!