ジャパニーズ・イングリッシュのすすめ

2012/2/1 

「自分が英語で苦労したので、子供にはそんな思いをさせたくありません」と、テレビの街頭取材にこたえて、あるお母さんがおっしゃってました。「ネイティブな英語がしゃべれるように、子どものころから英会話教室に通わせてます」と、べつのお母さんがおっしゃってました。それを聴いて私は、ネイティブの意味に首をかしげたものです。以前、某有名大学のフランス語の非常勤講師の応募条件に、「ネイティブなフランス語」と特記されていたのを思い出しました。ところでネイティブって、なんなんでしょうかしら。

「ネイティブというからには、母国語がフランス語ということかしら?」と、仏文の先生をしている親友に聞いてみました。すると先生が即座に、こういったのでした。「そんな堅苦しいこと、いわないでよ。ネイティブというのは、生きたフランス語会話ができる人材ということですよ」と。そして私は、そのていどでネイティブなのかと、胸をなでおろしたものです。日本人の私たちの母国語は、あくまでも日本語。英語圏の人を相手に、内容のないことをベラベラしゃべってもバカにされるのがおちです。まず日本語で物事をしっかり考え、それを逐語訳することからはじめましょう。それでは「クラウン・イングリッシュ」や「スタンダード・イングリッシュ」の時代と変わらないじゃないかとお思いでしたら、実はそうです。フランス人を笑わせてきた私がいうのですから、説得力がありますよ。

英語が苦手なお母さん、卑屈にならないでくださいな。高い月謝を払ってべらべらに擦れるより、お父さんの謙虚なジャパニーズ・イングリッシュの方がまし。「英語(フランス語)が下手でごめんなさい」と、先手を打ってあやまっちゃいましょう。そうすればきっと、こう返ってくることでしょう。「僕こそ、日本語が話せなくてごめんなさい」と。まずは日本語で、しっかり自己表現できる子供に育てましょう。自己主張ではありませんから、くれぐれもお気をつけください。