あっぱれ観光立国

2012/9/15 

またまた、よく歩いて乗って、食べて笑って帰ってきました。パリの町もBRICs全盛で、以前とちがった人種の坩堝でした。ルーヴル界隈やデ・プレもヴェルサイユもポルトガル語やロシア語に中国語が飛び交い、私たち日本人はむしろひっそり。つま先に落ちたばかりのぴかぴかマロニエを感じて、なんとなくほっとした私。なん人もの友人に会い、そのたびに『お金がなくても平気なフランス人』を再確認。それにいたしましても観光色をさらに濃くした町に辟易しながらも、大っぴらに観光宣言してしたたかな笑みを浮かべるパリに脱帽。モノクロームから極彩色に変貌したパリは、あっぱれなほどでした。

感心したことは、ほかにもございました。今さらとおっしゃられそうですが、フランス人の雄弁さに、つまりお喋りに圧倒されっぱなしでした。のべつ幕なしに喋る彼らに呆れ、おなじ人間なのに、どうして彼等ばかり話題が途切れないのかしらと、それが不思議で耳ダンボな私。自らの存在証明ででもあるかのように、こんな調子で喋りつづけるんですから、すごいです。30代のふたりの男性の会話をお聞きください。
A:先週はたまらないほど、最悪な週だったんだ。上の棚にしまっておいた本が、信じられないことに、僕の頭めがけて落ちたんだ。今まで一度も落ちたことなかったのに、どうして先週にかぎって落ちたんだと思う? 犯人は彼女で、僕の誕生日にくれようと思って、プレゼントを上の棚の奥に隠してあったんだ。彼女、なにごとにも注意深くないからさ、適当に隠しておいたわけよ。だから積んであった本がずれて、なにかの拍子に僕の頭めがけて落ちたんだよね。せっかく隠しておいたプレゼントを僕がみてしまったといって彼女は泣くし、なだめるのが大変だった。ベットから出て、靴を履いて紐を結ぼうとしたら、こんどは靴の紐が切れたんだ。小学生のころから、一度も靴の紐が切れたことないのに、なぜ切れたんだろう。仕方がないから、モカサンに履き替えたんだ。そしたら、靴の中に石鹸が入っていたのに気がつかずに履いたもんだから、爪が痛いのなんのって。それが月曜日の朝のことで、昼にランチを食べに行こうと思ったら、レストランのチケットがないわけよ。朝、着替えたブレザーのポケットにいれたままだったんだ。午後、彼女の機嫌を取ろうと思ってお詫びの電話をしても、返事がないし……
B:僕は、まあまあだったかな。週末はずっと娘を預かっていたから、ハッピー……。
延々と終わらないおしゃべりを聴きながら、聞き上手は日本人の取り柄にちがいないと思ったのでした。