アルセーヌ・ルパンに夢中です

2013/2/1 

ほんと最近、良書についている私ですが今回はなんと、かのアルセーヌ・ルパンです。親友がGSにさりげなく置いていってくださった一冊に、たちまち虜になってしまいました。マルコ・ポーロさまに降りかかった艱難を思えば、これしきのことと励まされている日々ですが、たまには娯楽本もいいかも。おかげでモーリス・ルブランが作り上げた、アルセーヌ・ルパン像が色あざやかに浮き彫りになりました。中高のころに読み漁ったシリーズが、『ルパン、最後の恋』で見事にフィニッシュ。昨年の9月に出版されていたというのに気づかずじまいで、まったくもってお恥ずかしい。版元が早川書店さんで、表紙を眺めてほっとしました。

そもそも『ルパン、最後の恋』は、作者のM・ルブランの遺稿です。息子さんは未完のその作品を知っていらして、出版を拒否されたとか。孫娘が原作の束をひもとき急きょ世に出たわけで、その意味でも世界中のファン待望の作品にちがいありません。探偵が主役のポアロやホームズ、メグレ警部も面白いですが、ルパンのように事件の犯人が主人公というのがたまりません。事件の謎を解く主人公にかわり、事件を起こす犯人が主人公のわけですから物語の展開が360°したい放題いいたい放題。全編をつうじて恋多きルパンですが、最後の恋は過去の遍歴とはひと味ちがいます。素肌美人の知性派と相思相愛の成就にご不満もおありでしょうが、結婚後のルパンも波乱万丈。作者が亡くなった1941年から逆算して、時代背景は第二次世界大戦中のこと。パリ北郊の貧民屈で知られたパンタンを舞台に、巨万の富を惜しげもなく都市計画に投入。癒しようのない悪ガキどもに規律を教え、泥と垢にまみれた彼らに一条の希望をもたらした英雄がルパンだったとしたら……。シリアスものとはかけ離れ、娯楽性いっぺんとうの作品が、さらなる展開になったかも。ベッドに伏したルブランの作家魂に去来した、ルパンその後の構想やいかに。時もときです、反ナチの旗手になったルパンというのもありかも。ルパン三世もびっくりの、続編がみつかる可能性に期待したいものです。フィクションの世界って、いいですね。