おかしなおかしの自己主張

2013/2/15 

「考えるお菓子屋」なんて、あまり様になりませんが、最近の私はまさにそれ。最近というより今月、バレンタインとクッキー缶の仕上げが重なり、遅くまでGSの厨房にいる日がけっこうございました。スタッフと調理台を挟んで仕事するのは楽しいですが、ひとり残ってごそごそもまた格別。もともとひとり遊びが得意な私の手と頭が勝手気ままに動いて、時計の針を眺めてシンデレラ気分になるのも束の間、まるで部屋でPCに向かっているときのように縦横無尽に自分の世界にどっぷり。ゴミ収集車の気配に自分の家じゃないことにはたと気づいて、「帰らなくちゃ」で鍵閉めて、大急ぎで退散。おかげさまで多趣雑多な発想が、手の平を通じて前頭葉を刺激。「お菓子のお菓子な自己主張」というキャッチを思いついてはしゃぐ私がおります。

それはスタッフが焼いてくれたパウンド生地に、イチゴのアイシングをしているときのことでした。フリーズドライのイチゴパウダーに粉糖を混ぜて、ほんの少量の水を加えて捏ね捏ね。ミコヤ香料の営業さんがサンプルにくれた、イチゴのエッセンスを一滴たらします。濃いイチゴ色に種がぷちぷち混ざり、やがて厨房が強烈なイチゴの香りで満たされるのでした。パウンドの表面が半透明の深紅のつややかなアイシングにおおわれた瞬間、「お菓子のお菓子な自己主張」がはじまります。翌朝、アイシングが固まったのをたしかめて、5.5p角にカットしてスクエア・ケーキとして店頭に。深紅のイチゴのほかに、すっぱいレモンとオレンジ、ピスタシオ100%のペーストで鮮緑色も仲間入り。どれも着色ではなく、本当が信条のお菓子たちです。真っ白なお皿の上で繰り広げられる、「お菓子なお菓子の自己主張」、素敵じゃないですか?

GSではお菓子だけでなく2階でお出ししている紅茶もコーヒーも、「らしく」を最優先。といっても、よくいうこだわりなんかじゃありません。鴨のモモ肉のコンフィは鴨らしく、牛すね肉のポト・フは牛肉のうま味エキスが凝縮。豚の肩肉の塊は、これぞとばかりに豚ちゃんを主張。GSではあなたも気取りを脱ぎ捨て、だれよりもあなたらしくいられることでしょう。もちろん、私は私です(笑)。