バカンス明けに新学期

2013/8/15 

冬に分散傾向にあるといわれながらも、フランスのバカンスはやはり夏です。家族が集まるクリスマスも大切ですが、バカンスに彼らの好きな言葉、生きる歓びが凝縮。一年がバカンスで明けて、バカンスで暮れるというだけあり、大人たちの希望も期待もそこに集中します。相手がいない人は、バカンスまでにパートナーを探そうと、かなり躍起になります。それでも特定の相手がいないなら、実家のご両親や学生時代の親友の、同じような身の上の仲間とバカンスに出発。それにしても新学期がバカンス明けとは、よくしたものだと思います。わが国で9月新学期がなじまないのは、一年のケジメが3月に集中しているからにちがいありません。新車の発売もオペラも、フランスはバカンス明けの秋からですもんね。

新学期がはじまる9月に間に合うように、子供さんのいる家庭は8月末までに夏のバカンスから戻ります。疲れ知らずの子供たちはまだしも、バカンスですべてのエネルギーを消費してしまった大人たちのぶざまなことといったら、この時期の彼らには目も当てられません。太陽を浴びて焼いた肌に秋風が吹き、よれた夏服にカーディガンを羽織る、おしゃれとは程遠い彼女たち。この季節、放心状態の人々の無防備さと倦怠感と、晩夏にありがちなやるせなさが町中に漂います。ところがところが、フランスでは子どもは夫婦のためではなくて、社会全体のかすがい。バカンス明けのだれ切った大人たちをよそに、保護者に手を引かれて子供たちが、いかにも嬉しそうに新学期の校門をくぐります。そんな元気な子供たちに背中を押されて、大人たちが正気に戻るといっても過言ではありません。幼稚園児や小学生の、興奮したようすをみて、親たちもしぶしぶ日常に復帰。ひと夏の感傷にもう少し浸っていたいと思いながら、子供のプチ・デジュネを用意するパパ。新学期の初日に、担任の先生からもらった学用品リストのメモを持ったママと子供で、大手文具店は喧噪のうずです。黄色いテントが目印の左岸の文具店、ジベール・ジュンヌの騒ぎが懐かしく思い出されます。子供が世の中の〆になる社会を、わが国にも作りましょう。そのためにはわたくしたち大人がまずすることは、したい放題ではないかしら(笑)。