松の実クロワッサン

2013/9/1 

これを思いついたのは、GSの取材をお受けしたのがきっかけでした。タイトルは未定ですが、“東京で出会うパリ”がテーマの単行本に見開きで載せていただけるそうです。GSですから、ページの分類はスイーツでしょうか。そこでここはひとつ、よそさまにないオリジナルをと考え、真剣にフランス上空を飛翔。書店で立ち読みしていらっしゃる読者さんたちに興味を持っていただけるような、「なにコレ? 不思議でかわいい!」を求めて地方菓子をおさらい。探しあてたのがcroissants aux pignons、「松の実クロワッサン」でした。白地に切り抜き写真で映えるような、色も形も雰囲気もと、欲張ったたまものです。

クロワッサン・オ・ピニョンこと「松の実クロワッサン」は、プロヴァンス地方でしかお目にかからない素朴な焼き菓子。といっても珍しいわけではなく、プロヴァンスでなら、どこのパン屋さんでもマルシェの出店にもかならずあるおやつです。松の実というとなんとなく東洋的に思われがちですが、南欧の雑木林は松ばかりで、松ぼっくりごろごろ。マグレブと呼ばれる旧植民地は北アフリカや、スペイン、南仏、イタリアやギリシャなど地中海地方全域やレバノン、トルコなど中東でもお料理にお菓子にと大活躍。禁酒で知られるイスラム諸国では、激甘菓子に松の実を多用。それではプロヴァンス地方にしかない、愛嬌のある『松の実クロワッサン』について簡単にお話しましょう。 クロワッサンといっても、焼きたてのさっくりしたあれではなく、こちらはクッキー生地の周りにびっしり松の実をまぶして焼き上げたハードタイプ。アーモンドパウダーと蜂蜜を捏ねて丸めて、手の平にたっぷりの松の実を生地にはめ込む感じに仕上げて卵白で照りをだします。名称にあるように見た目はクロワッサンですから、あくまでもかたちは三日月にこだわります。これを機に5〜6pのかわいらしい松の実クロワッサンが、GSの定番にくわわりました。お近くにいらしたらぜひ、プロヴァンスの香りをご覧ください。たしかに、東京で束の間のフランスもトレ・ビアンですね。