おいしいバナメイエビ

2013/11/15 

メニュー偽造、食材偽装がかまびすしく報じられ、大手ホテルと大手デパートのトップがならんでおつむぺこぺこ。「国民の皆さまには、たいへんご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と繰り返す彼等から、「ウソをついてごめんなさい」といったニュアンスがまったく伝わらないと思ったのは、私だけでしょうか。それどころか、とちゅうから「みんなでやれば怖くない」みたいな感じになったのにはあきれました。ぺこぺこ頭を下げていた首脳陣が強硬なコスト削減指令を出したからこうなったわけで、今ごろ部下たちがめちゃくちゃ叱られているようすが手に取るようですし、末端イジメの構図も想像できます。子供のころ男の子たちがよく、「謝ってすむなら、警察はいらない」といっていたのを、思い出しました。そんなさなか、共同通信さんから、『食材虚偽表示を考える』のテーマで、執筆のご依頼を受けました。

朝日や読売新聞とちがって共同通信社さんに載ると、時差はございますが全国の地方紙に配信されます。たとえば『新潟新報』さんや『山陽新聞』さんが私が書いた記事を買ってくださるわけです。「朝、届いた『山陰中央新報』に記事が載ってましたよ……」のメールをいただくと、とってもうれしいです。そんなこんなで、地方にお住いの読者さんのご興味を喚起する紙面をと、書いていて熱がこもります。そのおかげで今回は、バナメイエビについて知るきっかけができました。芝エビの偽物にされた、バナメイエビが心底お気の毒になりました。生い立ちを調べるうちに、やがてバナちゃんと呼んでいました。衛生的で食べておいしく、おまけに生態系にも地球環境にも優しいバナちゃんこそ、エビの優等生でした。さっそくご近所のスーパーに飛んでいって探すと、ありましたバナちゃん。今まで名称が明記されてこそおりませんでしたが、以前からよく買ってましたバナちゃん。ソフトシェルのように殻が柔らかく、身がほぐれやすくてGoodです。バナちゃんだけでなく九条ねぎの代用品にされていたふつうの白ねぎも、国産に入れ替わったチリ産牛肉もいい迷惑。今回、偽造だといわれてわる者にされた食材にも、れっきとした作り手さんがいます。偽ヴィトンとはわけがちがいます、恥ずかしい。エビも豚も牛肉も、おネギもお蕎麦にも、食材にブランドはいりません。そうでした、無名が潔いのは万物の鉄則かもね。