バレンタインにオレンジピール

2014/1/15 

ジョルジュ・サンドをはじめようと思ったのが、7年前のちょうど今ごろでした。「思い立ったが吉日」とばかりに、せっかちにことを運んだあのときの自分に呆れながらも、おかげさまで、どうにか今日にいたっております。ご近所さんから、「本当によく働くわね」といわれて、返事に窮する私。当の私は、GS(ジョルジュ・サンドの略)で働いているという気がしないのです。階段の昇り降りだけでも、たしかに体力は使っておりますし、12時間ぐらい店にいる日もざらなので、世間的には働いていることになるのかもしれませんが。そのことを神楽坂の老舗甘味処の『紀の善』の女将に申しましたら彼女が、実に的確な答えを出してくださったのでした。

以前から聡明な女性だと思っておりましたが、さすがです。女将いわく、「働き者にみえないアナタがちゃんと働いているから、まわりの人が感心しているのよ。毎日、定刻に店を開けることなんて、商人なら当たり前のことだけれども、アナタがしているから意外なのよ」と。これほどのご指摘が、ほかにあるでしょうか。持つべきものは、親友ですね。そんなこんなで、焼き菓子屋をしているからには、バレンタインは無視できません。昨年、形ばかり作って好評だったオレンジピールを、今年は店頭にならべることにしました。

GSのガトー・ショコラは、フランス製のヴァローナ社のチョコレートだけで作っております。技術がないからお材料に依存しているわけで、品質もお値段も最高。そのヴァローナのチョコレートで、パリ時代から使い慣れているサバトン社のオレンジピールをコーティング。チョコレートの命はテンパリングという、溶かすときの温度調整にあるといわれております。失敗すると、固まったチョコレートの表面に粉が吹いたようになってしまいます。だからといって、神経質にならないのがGS風。粉が吹いたら吹いたで、味が落ちるわけではありませんから、2階でコーヒーのおともにお出しすればいいでしょう。それに、技より心がGSのバレンタインらしくていいかも。四角いクリアボックスにオレンジピールをぎっしり詰めて、美味しい愛のキューピットを作りますからご期待くださいね。