一般教養のススメ

2014/6/1 

道ですれちがった学生さんから、こんなおしゃべりが聴こえてきました。「サンキュウがせいぜいで、ヨンキュウは無理だったよ。仕方ないよね、一年生だもん」と。初々しい大学生で、それもぴっかぴかの一年生。ですから産休のはずはなく、四休かなわず三休。ということは金土日の三日がお休みで、授業があるのが月火水木の四日間なのでしょうか。だとしたら今の大学生、アルバイトに精がでるはずです。とっさに<グランディフロラ>と、<ピラカンサス>の二種類の植物のラテン語名が口を突いてでました。前者が大山木で、後者が橘もどき。織田先生、その節はお世話になりました。よりにもよって、一般教養の生物の先生のお名前を覚えていた自分が笑えます。

南仏のニームという町に、天に届きそうな巨木がありましたっけ。「あっ、グランディフロラだわ」とつぶやき、空を仰いで飽くことなく眺めたものです。あのとき、グランディフロラという大山木の学術名を知っていたからこそ、乳白色の大きな花に連鎖して思い出されるニームの町の印象が色濃く胸に焼き付いております。郊外にローマ水道のユネスコ遺産がある古都ニームが今しも、グランディフロラの芳香を伴って鮮やかに蘇るのでした。

一方で、「知っているから、なんなのさ」、または「知っていることと、わかっていることはちがうわよ」と、耳元で女神さまがささやきます。それでも開き直って私は、こう申し上げたい。広く浅くでもいいから、知っていることがヒントになって想像力が育つと。大雨が降ると、どこかの樋が壊れているらしく、GSの店内に凄まじい勢いで雨音が響きます。そんなとき、BGMにかけているショパンの音量を大にしましょう。プレイエル製のピアノの鍵盤をたたいていショパンが、すぐそこにいるではありませんか。マジョルカ島に生い茂る古木には及びませんが、今年も入口の脇にある鉢植えのオリーブにたくさん花が咲きました。どうでもいいといってしまえばそれまでですが、想像力ひとつで人生がなん倍も面白くなります。どうぞみなさんも自信を持って、役に立たないことをなさってください。「あああっ、バッカらしい!!」と自己嫌悪を覚えるのも生きている証拠。そうですよ、一般教養の面白さを教えるのも、私たち大人の役目かもね。