ペンキ塗り

2014/8/15 

お盆休みに、GSの売り場と厨房のペンキを塗り替えました。スタッフで料理研究家のYさんの、ご主人が手伝うといってくださったのを機に一念発起。美大OBのおじさまも動員してのペンキ塗りの、予想をはるかに超えた仕上がりにみんなで陶然。塗りながら、明るいグリーンの天井と壁に悦楽のひとときを味わったのでした。あたかも色の持つ、不思議な魔力にはまってしまったかのようでした。

ここ長いこと忘れていた、刷毛の感覚を取りもどして私は、あらためて前世はペンキ職人を実感。それにいたしましても、刷毛とローラーを駆使して、みんなして黙々と作業に励んだ甲斐がございました。美大OBのおじさまがた、Yさんご夫妻、GSのためにお休みを返上してペンキ塗りに参加してくださって、ほんとうにありがとうございました。湧き上がるような昂揚感とでも申しましょうか、全身の筋肉疲労もなんのその。おかげさまで、ひと夏の素晴らしい記念になりました。こうして文章を書くのも好きですが、ペンキ塗りにはべつの魅力がございます。素人ならではの手抜きと不慣れさと好みの厚塗りが相乗効果になって、まるでヨーロッパの街角のような空間が神楽坂に出現。大袈裟なようですが、シミも汚れも丸ごとひっくるめて、完全ニューアルどころか見事に蘇生してしまうペンキ塗りは人生そのもの。これは、自分で塗り替えてこそ思うことで、プロに任せてしまってはわかりません。今はやりの、Do it myselfの醍醐味にちがいありませんね。ペンキ塗り決行の前夜、ショップと厨房に一箇所ずつ必要な目隠し用のカーテンを縫いました。先回のパリ旅行で買ったまま、クロークの奥にしまいこんであったインテリア用の生地があることを、思い出してラッキーでした。ピンク系の大ぶりな花柄が、計らずもペンキの色にぴったりでした。鋏でカットしようとして生地の端に記されたフランス語を読んで、こんどはびっくり。なんとそれは、アルザス南部はミュールーズという町の、繊維博物館所蔵の版木から起こした木綿生地だったのです。南仏のプロヴァンス模様とはまったくちがって、伝統のアルザス模様もとても素敵です。英国で起きた産業革命が、パリに先駆けて地下資源が豊富なミュールーズの綿織物業に飛び火した経緯もございます。アルザス模様のカーテンと厚塗りシックに変身したGSに、秋になったらぜひおいでくださいな。