偉大なるノストラダムス

2014/9/15 

マルコ・ポーロに恋していた私はこのところ、ノストラダムスにのめり込んでおります。『ノストラダムスの大予言』のころから気にはなっておりましたし、彼が晩年を過ごした南仏のサロン・ド・プロヴァンスにある家をなんどか訪れたこともございます。あの『ガルガンチュア物語』を書いたラブレーと、モンペリエ大学でともに学んだ時期があるなど、歴女の沽券にかけて私の興味はつきません。今回、ノストラダムスについて考えたのは、日清製粉さんが出しておられる雑誌に季刊で連載している、「フランスの地方菓子」で書いた<松の実クロワッサン>がきっかけでした。三日月型したクッキーの表面にびっしり松の実が埋め込まれているそれは、なんとも素晴らしく愛嬌のある南仏ならではのお菓子の逸品。四半世紀もまえ、エクスという町で<松の実クロワッサン>に一目惚れ。原稿を書きながら思いは四方八方に飛び、ついに「もしかしたら、ノストラダムスも松の実クロワッサンを食べていたかも」という、仮説まで立ててしまったのでした。

日本人の私たちにとって松の実は東洋のイメージどころか、袋に入って売られている松の実はほぼ100%中国産。ところがどうして、フランスだけでなくイタリアでもスペインでも、地中海沿岸は松林が延々。地中海なら松ではなくてオリーブの木ではとお思いでしょうが意外です。ついでに申しますと、オリーブの木が植わっているのは地中海地方の内陸部。ローヌ・アルプ地方のニオンスという町が、フランス一のオリーブの産地なんですよ。話を松の木に戻しますと、地中海といえば松の木。防砂林になっている松林の先の砂山にのぼると海だなんて、まるで私の原風景ですが、松の木には松ぼっくりで、お猿が食べた松の実に帰結。薬膳で主役になる松の実が、古くから南仏の人々に食されていたわけで、お菓子の材料になって<松の実クロワッサン>が誕生。そこで医学と、中世では錬金術師と紙一重だった薬学をきわめたノストラダムスが松の実を食べていたのはたしかで、『ノストラダムスの万能薬』に記述がありました。ついでに、私の大すきな<松の実クロワッサン>についても書いておいてくれたらいいのに。調べあぐねて多情多感な私は、早くも次なる恋人に出会ってしまったのでした。その人の名はドン・キホーテ。馬のロシナンテと従者、サンチョ・パンサを連れたドン・キホーテに、これからはまりそう。秋の夜長、読書週間にしませんか?