フランス『音楽の日』

2015/5/1 

今年は6月21日の日曜日、フランス上空を音楽が舞う。1982年、時のジャック・ラング文化大臣の掛け声でFete de la musique、フェット・ドゥ・ラ・ミュージックがはじまりました。ですから、今年で、33回目。今回の私のパリ到着の翌日が、はからずもこの日です。2000年のワールド・カップ優勝祝いの乱痴気騒ぎ以来、フランスのお祭りが派手になってます。朝から晩まで、この日にかぎり街頭でも広場でも、ジャズやソウル、ロック、ボサノバ、当然クラシックも弾き放題、聴き放題の無料。大道芸人よろしく、演奏者たちの前に、帽子や箱を用意。中にはプロはだしのグループもいて、彼らの前のお賽銭箱には、紙幣が投げ込まれているからご愛嬌。この季節、梅雨はありませんし、人々はプープカ・ドンドンに合わせて、音楽散歩のついでに時にはダンス。バカンスの前哨戦とばかりに、夜の9時過ぎても明るい夏の夜を満喫。「音楽の日」は、私がパリに暮らしはじめて数年して、始まったイベントでした。ちょっとセピア色した、第一回での光景をお聞きください。

そのころ住んでいたのはパリ5区、ムフタール市場近くのアパルトマンでした。その日、いつものように家を出て、左岸と右岸をつなぐポン・ヌフ橋に差しかかった時のことでした。すると突然、テイク・ファイブのリズムが私を待ち受けていてくれたのでした。橋の名前を邦訳すると、新橋になります。パリ最古の橋が新橋とは笑えますが、石造りの立派な橋です。27番のバスに乗ってもよかったのですが、その日はなんとなく、たそがれのパリの町を歩きたいような心境でした。次の曲は、待ってましたとばかりのサマー・タイム。聞きなれたジャズも、生演奏は格別でした。まだCDがないころ、大判のレコードをかけて聴いていた曲に、しみじみと見とれたものです。しばらく行きましたら、ポン・ヌフ橋の右岸寄りのたもとで、もう一組のミュージシャンたちが、演奏の準備をしているではありませんか。パリっていいな、こんなに日常的にジャズの生演奏に出会えるなんてと、感心しながら帰宅。戻って自宅で、カラーに換えたばかりのテレビをつけました。その日がフェット・ドゥ・ラ・ミュージックの日だったことを、その晩の7時のニュースで、知りました。パリで「音楽の日」の写真、撮ってきますね。