お野菜が主役の地中海料理と絶品リュバルブ

2015/6/1 

ファッション以上に、お料理のほうに流行があるかも。もちろんわが国のことで、フランスにも新しい料理の傾向はありますが、わが国にくらべれば微動。今、東京で地中海料理、つまりキュイジーヌ・メディテラネが大流行。バブル期にあったエスニック料理さながらのブームです。私の学生時代は六本木に、それ以前も横浜に、ギリシャ料理のお店がございました。二〇年ほど前に、レバノン料理のレストランが東京に出現。NYやパリの高級店にはおよばないものの、トルコや中近東のお料理も珍しくなくなりました。そして最近の地中海料理のメニューを見ますと、ギリシャやレバノンではなく、モロッコやアルジェリア、チュニジアなど、フランスの旧植民地でマグレブと呼ばれる一帯が主流。フード・コーディネーターさんもお勉強をしていらっしゃるようで、運ばれてくるお皿に「ヘエーッ!」と、目を丸くする私。どれもがキレイで、日本人好みに工夫されているからさすがです。量が多くて安くて、満腹感が信条のはずのクスクスが大匙3杯でも、赤と緑のピーマンとおナスとズッキーニが1/4ずつの、小ぢんまりしたタジンでも、本場のそれと比べなければノー・プロブレム。世界のどこよりもおしゃれな地中海料理のカフェ・テラスがたくさん、表参道や青山あたりに出現。ランチだけでなく日没後も、リゾート気分たっぷりなウッディ―なデッキで寛ぐ、おしゃれな男女が都心の風物詩。欧米系のお客さまも多く、「ここは、どこ?」の世界ですよ。

地中海料理の人気の秘訣は、美味しいお野菜にあります。女性たちに指示されているのは、ヨーグルトやヒヨコ豆のペースト、オリーブ油など、動物蛋白にたよらないテイストと、少な目のでんぷん質。肉食女子と矛盾するようですが、彼女たちはベジ礼讃。なにしろわが国は、言わずと知れた野菜大国。十数年前まではイタリアのメルカートやフランスのマルシェにしかなかった葉ものや瓜系も、今や国内農家が立派に栽培。在仏日本人がパリ郊外で作っているお野菜が、フランスの最高級レストランで引く手あまたなのも納得。国の内外で日本人が丹精込めたお野菜が、大和魂の発露かも。その思いが、親友が届けてくださったリュバルブで確固たるものになりました。赤くて酸味の強い茎の部分が、お菓子やお料理に珍重されるわけですが、いただいた八ヶ岳産のそれは圧巻。グラニュー糖でたった数分煮ただけで、とろーり深紅の絶品コンフィチュールが完成。これぞ、世界一のリュバルブに違いないと陶然。日本人って、偉いですね。