diary日 記 2016 / 07 / 01

「 たまには食べたい懐かしの洋食 」

お客さまが続き、フレンチの献立が出尽くした感がございます。ロースト・ビーフに赤ワイン煮と、フランスの名物料理などなど。レシピなしで作れる得意料理とはいえ、そう頻繁では作る側もギブ・アップ。そこに素人とプロのちがいがあるともいえるわけで、作るの飽きたなどと不謹慎なことをおっしゃることが決してない、シェフたちの並ならない努力にあらためて頭が下がります。シンクを見つめながら、次はなにを作ろうかしらと思案の末にゆきついた先が洋食でした。そうだ、洋食を作ってみよう。それも子供のころに、父に連れて行ってもらったコニシを思い出して、とくに美味しい洋食にトライしましょう。といっても肝心のコニシがどこだったか、伊勢佐木町だったか横浜駅だったか、はなはだ記憶があいまいです。場所が定かでないままに舌の記憶をたよりに、しばらく洋食行脚をしてみることにしました。美味しい洋食を探して食べてみるだけではなく、作ってみたくなりました。

手はじめに、牛スネ肉のシチューを作ってみました。GSをしていたころにお届けいただいていたお肉屋さんにたのんで、上等なスネ肉を厳選。「エッ、スネ肉に上下があるの?」とお思いかもしれませんが、ございます。コラーゲン質の筋に脂肪がまとわりついていない、赤身部分とスジだけの上物です。頭の中の仕上がりイメージは、濃いべっ甲色のように透明度があるシチュー色。さてさて、トマトケチャップとドゥミグラソースで、どこまで舌の記憶の再現ができるかしら。手ごたえのあるスジ肉を食べやすい大きさにカットし、なんども水洗い。沸騰させては、ゆで汁を煮こぼすこと三度。蓋をしてコトコト煮る時間はあんがい少なく、二時間弱。柔らかくなったスネ肉の煮汁の油を捨てて、べつのお鍋で煮詰めてみましたが、ドゥミグラソースのとろみもコクも、納得いきません。スジ肉をトマトケチャップで大胆に覆って、真剣に考えました。肉汁をドゥミグラ風にするには………。そして、はたと思いつき、テフロンのフライパンをガスの火にかけてグラニュー糖をぱーらばら。そうです、キャラメリゼしたフライパンにジューと煮汁を注ぐと、思惑通りに飴色したソースが完成。こげ茶色に煮詰まったソースを得てケチャップの派手さが、シチュー色に仕上がりました。さてさて、次はタン・シチューあたりに挑戦してみようかしら。洋食編を卒業したら、こんどこそ和食かもね。