diary日 記 2017 / 01 / 15

「 コンフィ・ド・カナールが作れない!」

ここ十年ほどで、コンフィチュールという言葉は定着しましたよね。ジャムや砂糖漬けのお菓子を、コンフィチュールというようになりました。中には餡のコンフィチュールなるものもあり、笑えます。甘いもの一辺倒と思われがちなコンフィチュールですが、しょっぱい系もたくさんあります。玉葱のコンフィチュールなどはとても便利で、水で薄めてチーズをのせてオーブンで焼くだけで、本格的なオニオン・グラタンになります。もともとコンフィチュールには漬け込むという意味がありますから、お塩やお砂糖、油漬けにする保存食の作り方でもあります。有名なところでは鴨のもも肉の、コンフィ・ド・カナールというのがそれです。塩漬けした鴨のもも肉を低温で油煮したものを、食べる前にオーブンできつね色になるぐらいに焼き上げて熱々をいただく、典型的なビストロ料理です。

鴨のもも肉の、つまり油煮がコンフィ・ド・カナールですが、これを日本の鴨肉で作るのは難しいですし、高級すぎるのでおすすめできません。なぜ、ここでコンフィチュールのことを書いているかといいますと、数日前、よく買っているフランスの輸入食品専門店の「アルカン」さんに、いつものように鴨のもも肉を注文しようとしまして、予想外のことがあったからです。それを申し上げる前に、日本産の鴨で作るのが難しいわけは単純で、サイズの問題なんです。もともと日本の合鴨は小ぶりですから、長時間かけて油煮しますと、残念なほど小さくなって高いものについてしまう。鴨南蛮や鴨鍋など、あまり煮込まないお料理なら格別に美味しいのですが、低温でじっくり油煮する調理法にふさわしくありません。それにくらべて「アルカン」さんが持っている大西洋側のシャラン産の鴨はだんぜん丈夫。食品店で売られているコンフィは、フォアグラを取った後の鴨を解体した加工品です。私が注文したかったのは新鮮なもも肉で、一本ずつチルドになっていて大きくて使い勝手がとってもいいんです。「この鴨、鶏肉みたいに癖がないと言われたら、鴨が怒る」と、鴨にいわれてしまいそうなほど、鴨肉には鴨ならではの匂いがします。ですから鴨のコンフィを仕込むときは覚悟して、一度にたくさん作ることにしてます。ところがところが、今回は入手できませんでした。フランスが輸入したハンガリー産の鶏肉から、鶏インフルエンザが出てしまったそうです。鶏インフルは人間には感染しないとはいえ、空港の検疫では「ノー」ですよね。根気よく連絡を取って、シャラン産の鴨のもも肉の入荷を待つことにします。私のレシピを記しますと、80~90°で約2時間かけて油煮したものを保存。食前に200°ぐらいのオーブンでこんがり焼いていただきます。今年もワインと相性のいいお料理を、いくつかご紹介しますね。