diary日 記 2017 / 10 / 15

柿があったら、お試しください

今の季節、柿をいただくとうれしくなります。果物屋さんで売っているブランド柿ではなく、庭先でなった丸くて硬くて小さいのがいいです。柿はなますや白和えにも使いますが、そのまんまサラダがだんぜんおすすめ。リンゴや梨でも同じようにできますが、白いお皿に山盛りにしたレタスの真上から、スライサーで柿をしゅるしゅる。手で大雑把にレタスと混ぜて、最後にドレシング。はじめからヘタを取り除いておいて、皮ごとでOK。小さな柿を眺めて、剥く手間にため息をつくこともありません。ただし、スライサーの刃が種に当たったときは、あきらめて種をえぐり取ってね。秋の草原に夕陽が降り注いでいるようで、柿サラダはポエティカル。スライサーは100円ショップので十分ですが、指先をスライスしないようにお気をつけください。柿のシーズンになると毎年、パリのマルシェで売られているそれを思い出します。まず、10個中10個、かならず渋いんですから呆れます。英語でパーシモンですが、ヨーロッパではどこでもKakiと呼ばれています。たいがいはエキゾチック・フルーツ並みのお値段で、あまり一般的ではありません。あるとき、Kakiがあったお店のムッシュに「これ、渋くない?」と聞きましたら、「渋くないKakiはKakiじゃないよ」と言われました。それでも毎年、柿を見ると買ってテーブルに飾ったものです。

サラダの他にもうひと品、美味しい柿の食べ方を見つけました。今度は皮をむいて、普通にカットしてフライパンにサラダオイルをほんの少し敷いて、一か所に焼き色がつくくらい焼いてください。硬い柿でも、時間をかければ柔らかくなります。牛肉、豚肉、ラムチョップはもとより、焼き魚に合わせてもこの柿が、実にいい感じなんです。また、豆皿に1/8のソテーした柿をひとつのせ、冷蔵庫にありあわせの佃煮かなんか横にちょこんと添えれば「おおっ!」で大受け、だれもが喜ぶ逸品のできあがり。大学に入ってすぐに仲良しになった女友だちの家の庭に、大きな柿の木があるんです。彼女から、家の人から見えない裏側を啄む賢い烏の話を聞いて、驚きました。部屋から眺めて、赤く熟れたころ合いを見計らって庭に出て柿をもごうとしたら、なんと彼女から見えていなかった部分が大きな穴ぼこ。私の知らないことが、世の中に無尽蔵にあるんですね。そしてなぜだか急に、鴎外の「最後の一句」が読みたくなって、本棚をあさってしまいました。サクランボは可愛いだけでなにも反応しないのに、柿に感性が刺激されるのは不思議です。思索の秋です、もっと面白メニューにこだわってみますね。