diary日 記 2018 / 03 / 01

立つ鳥 後を濁す

先月のこのページで、わが家のベランダの甕に挿した立派な蠟梅に飛んでくるバードについて書きました。いつもは無人であかりがついていない応接間を、なんと17分も眺めていたヒヨドリの存在が、とても印象的だったからです。昼間、PCに向かって仕事をしているとき意識的に背筋を伸ばしますと、PCの向こうにガラス越しに、縦細のベランダが見えるんです。小鳥が飛んでくる気配を感じて、居ながらにしてバードウォッチングというわけです。蠟梅の花を一番たくさん食べるのはヒヨドリですが、オナガや美しいセキレイもやってきます。近くでかあかあ鳴いているカラスが来ないのは不思議ですが、私が気づかないだけかも。シクラメンや蠟梅などの花があるだけで、美味しい食べ物がないから寄り付かないのかもしれません。以前に住んでいた家の、幅たった30㎝のベランダには猫も来てくれていました。まったく懐いてくれませんでしたが野良の三毛猫をミケランジェルと呼んで、猫好きの親友から分けてもらった五つ星の餌を上げて楽しんでおりました。今のマンションのベランダにも野良に来てほしいのに、来てくれるのは鳥たちだけです。来る日も来る日も蠟梅の枝にとまるヒヨドリを眺めていた私に、青天のヘキレキのようなことがございました。世間でよく言われていて、見かけによらず律儀なところがある私も常に心している諺のひとつでもある『立つ鳥跡を濁さず』が、大ウソだということです。

私に倣ってベランダに花を飾ったら鳥のフンに辟易して、その日のうちに花をベランダから片付けた奥さまがいらっしゃいます。実は私も蠟梅以来、フンの量の多さに驚いて、「エーッ、これはなんなのだ!」とバカボンのようにのたまったものです。でも、鳥たちに来てもらいたい一心で、トイレのコーナー用のブラシを100円ショップで買い、花に水を上げるタイミングでごしごし水洗いしてました。そんなある日、私の自慢の赤ワイン煮をまだ召し上がってないとおっしゃったご夫妻をお招きしたんです。おふたりとは、かなり長いお付き合いで、奥さまは最近、もっぱら「ハーレクインコミック」を描いていらっしゃる漫画家の村田順子さんで、伊藤理佐ちゃんのかつての先生。ご主人さまはお料理雑誌「オレンジページ」きってのグルメで知られる、蝶ネクタイと丸眼鏡のダンディーで博識な藤井美夫さんです。お食事中の話題にはふさわしからざるベランダに飛来する鳥たちの置き土産の話になりましたら、蝶ネクタイのダンディーさんが、「鳥は飛び発つ前に、からだを軽くしておくためにフンをするんですよ」とにんまり。そして即座に、「なるーほど!」と頷いて以来、鳥たちのお行儀を云々する気が失せました。そうですよね、私たち人間ができない空を飛ぶことを鳥はできるんですもんね。それにしてもなぜかしらと、おかしな諺の出自を調べてみました。PCで検索しただけの浅薄な知識で恐縮ですが、白鳥は飛び立つときに水面を汚さないように、静かに飛び立つことからきているそうです。たしかに白鳥は羽をばたつかせて着水しますが、飛び立つときは静かかもと納得。わが家の蠟梅、色香は若干薄らいだものの、予想通り3月いっぱい持ちそうなので、ベランダごしごしも続きそうです。