diary日 記 2018 / 06 / 15

カンヌ映画祭で「パルム・トール」

カンヌ映画祭で最高賞に輝いた『万引き家族』を、日比谷に完成したTOKYOミッドタウンの東宝シネマズで観てきました。チケットの発売が前々日からだったからか、金曜日の18時45分からなのに空席がちらほら。リリーフランキーさんも安藤さくらさん、男の子役がそれぞれに芸達者でしたが最高にできのいいTVドラマのような印象を受けました。というのも「パルム・ドール」過去2作への思い入れが大きすぎたのかもしれません。是枝監督の作品はほとんど観てますし、『万引き家族』も大変よくできてます。リリーFさんと安藤さくらさんカップル以外は、みんな疑似家族。樹木希林演ずるおばあちゃんのかつてのダンナを略奪婚した女性の実の孫で、風俗嬢をしている娘も他人です。万引きのスリリングな場面がありながら家族のだれもが相手に優しく、ほのぼのとしている。世間の底辺で暮らす人々から漂う、日本人が得意なアルカイック・スマイルが「パルム・トール」に値するのかもと納得。ただ、過去の『うなぎ』と、それ以上だった『楢山節考』の迫力には残念ながらあらがえないなと。そうなんです私の場合、記憶の断片にノスタルジーがいつも味方してしまうので、どうしても今が不利なんです。それでは、すでに「パルム・トール」を受賞している『うなぎ』と『楢山節考』をパリで勇んで観たときのことをお聞きください。

『うなぎ』を観たのは、カルチエ・ラタンのオデオンにある俗にいう封切館でした。97年でしたが、暗闇に水の音ばかりが目立つシーンが長く役所広司さんと柄本明さんの役どころが際立ってました。はじまってからしばらくは、「なぜ、これがパルム・ドールなのかな?」と不思議でした。そのうちストーリーの全容がわかり面白かったですが、やはり地味でした。「アカデミー賞」ではないんだからと、このときあらためてカンヌ映画祭の性格を思い知った気がいたします。そういえば『うなぎ』は、フランス語の字幕でしか観てませんでした。邦画は日本語じゃなければと、遅きに失した感ありです。姥捨て山の『楢山節考』を観たのは、シャン・ゼリゼの大きな映画館で、83年のことでした。その数年前にポンピドゥー・センターで日本映画祭があり、木下惠介監督で田中絹代主演の『楢山節考』も上演。日本映画祭にこんなにフランス人が押し寄せるのかと、連日連夜のポンピドゥーかよいのあのころの私は、まだ時間が無限にあると思ってましたからね。で83年作の『楢山節考』に話を戻しますと、見事としかいいようがありませんでした。ジャズシンガーの坂本スミ子さんが老女おりんを演じ、彼女を背負って山に捨てに行く息子が緒形拳さんでオール・ロケ。この2作とも、今村昌平監督ですよ。昔はよかった、映画もいいのがたくさんありました。