diary日 記 2019 / 05 / 15

フランス人は野菜好き

今、クズ野菜で作るポタージュの仕上げにバーミックスを回そうと思って、はたと気づいて慌てて自分の部屋に戻りました。2時間以内に、このページの更新日に日付が変わるではありませんか。そこで急遽、テーマを野菜大好き人間のフランス人にすることにしました。たとえばバカンスや仕事で外国から帰国し、まず、なにを食べたいかと彼らによく聞きました。すると大方のフランス人が、こう答えたのです。「もちろん、ステーク・フリットですよ」と。大きなステーキとフライドポテトのひと皿は、まさにフランス人の国民食。豊富なフロマージュも酪農製品ですから、羊や牛の産物。ハムやソーセージ、パテなど豚肉加工品のシャルキュトリーも彼らの食生活に欠かせませんし、ますます肉食の印象が強いですが、彼らのだれもが大の野菜好き。好きなだけでなく、牧場の牛のように毎食、もぐもぐ飽きもせず大量の野菜を食べるんです。その昔、偉大なる太陽王で知られ、ヴェルサイユ宮殿を造ったルイ14世が野菜を食べ過ぎて、侍医に注意されたそうです。野菜好きが高じてヴェルサイユ宮殿の庭園に、王さまは立派な野菜畑を作ってしまったほどです。また、オーストリアのハプスブルグ家からルイ16世に嫁いだマリー・アントワネットは、牧歌的な生まれ故郷をしのんでプチ・トリアノンで羊や牛を飼い、略して『ベルばら』の舞台になったアモーと呼ばれるシックな小屋のまわりを花だけでなく、野菜畑で囲みました。最近は宮殿とプチ・トリアノンの手入れが行き届いた野菜畑が、ヴェルサイユの魅力的な見学コースになっております。またまた逸れた話を、野菜に戻しましょう。

私たち日本人もコンビニができる以前は、食べ物を捨てる人種ではありませんでした。池波正太郎さんの小説の小道具になっている、お惣菜に使われている野菜も皮が剥かれている感じがしませんものね。フランス人の食べ物を大切にする根性は今も同じで、ごみになる部分がかぎりなく少ないです。高級フレンチで赤ワイン煮の付け合わせの定番、人参のココット切りで面取りした部分は、文頭で述べたクズ野菜のポタージュに化けます。町の風物詩になっているマルシェにも八百屋さんの軒数が多く、売られる野菜のほとんどがキロ単位。1キロの半分、ドゥミ・キロでお願いすることもありますし、軽いキノコ類などは250グラムですが、人参や玉葱などの常備野菜はやはりキロですね。人参と白い部分を使った残りの長ネギの緑の部分を取っておいて作るポタージュとステーク・フリットが、フランス人の国民食の両横綱。バーミックスで潰して滑らかにすることで、味も食感も変わりクズ野菜がれっきとしたフレンチにメタモルフォーズ。冷蔵庫に泡ものと一緒に、フランス版おふくろの味が眠っていると思うと、なんとなく浮き浮きしますよね。