diary日 記 2023 / 01 / 01

ヴァン・ショー、真冬に楽しむ温かいワイン

コロナ禍に突入して3年がたち、世の中が変わりました。日本人だけだといわれながらも、私たちは忠実に顔半分をマスクで隠して歩きます。だからこそというべきでしょうか、人通りが少ない夜道でマスクを顎まで下して、外気を吸い込むときの解放感がたまりません。夜空を仰げば、巨大都市の上空に満点の星。半月のすぐ近くに、一等星が煌めきます。コロナになって経済活動が低下し、空気がきれいになった証拠でしょうか、月と木星が中心になって、無数の星が夜空ではしゃいでいます。星はなんでも知っていると口ずさみ、いい気分で帰宅してヴァン・ショー、温かいワインとくれば乙ですね。スペインのサングリアの冬バージョンといってしまえばそれまでですが、フランス語でいうヴァン・ショーには、独特の深みがあります。アンダルシアの灼熱の太陽とフラメンコが似合うサングリアの底抜けに明るい雰囲気も好きですが、ひとりか、ごく少数の気の合う仲間とおしゃべりしながら飲むヴァン・ショーは大人の時間。ひとりで飲んで、徐々にからだが温まっていくプロセスに酔うのも心地よいですが、散歩帰りの週末の午後、ヴァン・ショーを名目にして、仲間を誘うのもおしゃれです。それではこれから、私がパリ時代に覚えたヴァン・ショーの作り方をご披露いたしますね。バレンシア・オレンジやレモン、ベリー系などの新鮮なフルーツが主役になるサングリアとちがい、ヴァン・ショーにはからだの芯まで温める冬向きの香料とドライフルーツを使います。それでは下段で、冬季限定の美味しいヴァン・ショーを作ってみましょう。

ワインは白でも作れなくはありませんが、温めるのでだんぜん赤がおすすめです。加熱し混ぜ物をするので、秘蔵のワインを使ってはもったいないです。普段飲みの赤ワインと、手近にある干した果物と香料を集めてください。冬を象徴するシナモンはスティックがあれば理想的ですが、パウダーでもかまいません。中華料理に使う丁字がグローブですから、あんがいお持ちかもしれませんし、あれば八角も使えます。ネズの実のジュニエーブルは本物志向には欠かせない存在ですが、手に入りにくいので粒胡椒で代用できます。オレンジやリンゴを薄くスライスし、ザルをかぶせて寒い屋外に出しておけば数日で乾燥します。クランベリーやプリュンヌやオレンジピール、干しブドウ、干しイチジクがあったら、ぜひ、お材料の仲間に入れてください。お鍋で赤ワインと一緒に、具材を入れて温めてください。バン・マリと呼ばれる湯煎器にかけるのが正統ですが、たまにしか使わない道具を増やしたくないので、私は厚手の片手鍋を使います。沸騰させるとアルコールが飛んでしまいますので、弱火でゆっくり加熱。ヴァン・ショーのとき、ワイングラスは使いません。取っ手付きの耐熱グラスがあれば理想ですが、いつものコップで大丈夫。ワインが温まったお鍋から、香料の匂いが漂ってきたら具ごとグラスに注ぎます。食前酒のアペリティフと同じで、ヴァン・ショーでお友達を招いたときにもおつまみがいりますが、食事ではないので支度はカナッペかミニ・サンドイッチていどでおしゃべりが主役。お散歩の後ですし、温かいワインは全身にまわりが早いですから、皆さん、くれぐれもご注意くださいね。 A bientôt !!!!!