diary日 記 2023 / 02 / 01

マクロン大統領よ、年金制度改革に着手なさいますか????

「100回ドリルなんてナンセンス。計算は最後の難しい問題ができればいいじゃない」というのがフランス式。「簡単な問題を繰り返してスピードを競う訓練なんて、軍隊じゃないんだからナンセンス」と、大人も子供も主張します。若きマクロン大統領がまさにフランス式エリートのそれで、歴代大統領が触らなかった難易度の高いフランスの年金制度にメスを今、入れようとしてます。現行の62才の年金受給年齢を2030年に64才からに繰り上げる案を強行採決する気配が濃厚になってきました。歴代大統領が先送りしてきた年金制度を今のうちに改正しておかないと、取り返しのつかないことになるとマクロン大統領は力説。たしかにEUの中でフランスの年金受給年齢が断トツに低く、他は65才からが一般的。ドイツとベルギー65才、英国66才、イタリアとデンマーク67才で、以上の国は2030年に受給年齢のさらなる繰り上げが決まってます。リタイア王国の誉れ高かっただけに、今回の大統領の大鉈で国民に激震が走りました。世論調査で64才定年に、国民の80%が反対。昨年の大統領選で最後まで残った極右、ルペンの国民連合も全力で阻止する構えです。最終的にマクロン大統領は保守系野党の共和党と組んで議決権を発動するご覚悟のようです。そうなると最古で最強の労働組合であるCGTの一声で、全国規模の交通ゼネストに突入は必至。CGTの団体交渉の結果が、すべての労働者に適応されるところが、フランスらしいところでもありますが、オリンピックは大丈夫かしら???

退職後は気候のいいミディと呼ばれる南部に隠居し、男と女+わんわんの生活をはじめるのが大方のフランス人の人生設計にほかなりません。拙著、『フランス人は人生を三分割して味わいつくす』(講談社α新書)でも書きましたが、フランス人は定年後はまず働きません。仲良くしていたチーズ屋さんもお惣菜屋さんも、年金受給年齢になったらあっさり店を人に譲り仕事とさようなら。「だって僕たち、働くために生まれてきたわけじゃないもの。若いときから勤勉に働いて子供を育て、ちゃんと税金を払ったんだから、第三の人生は妻とふたりでのんびり暮らす権利があるよ」と誰もがシュプレヒコール。アムール大国の面目躍如で、退職後こそパートナーの存在が重みを増します。男女ともに愛するパートナーが要りますが、田舎暮らしをはじめる女性にとって男性は必需品。LGBTそれぞれのケースでも、雑木林で枯れ木を集めて暖炉にくべる蒔を用意するために男手がいるでしょう。食卓に並べる野菜を育てるために畑を耕し、家を修復するブリコラージュと呼ばれる日曜大工しかりです。最近、NHKでカールさんの古民家暮らし特集が話題になってますが、年金暮らしで古民家移築は無理ですよね。フランスの年金生活者は、徹底して年金だけで暮らします。だだし住居に関しては、現役時代から準備周到。幼い子供たちとのバカンス先でも終の棲家になる場所を意識し、生活費がかからない居住地を物色。田舎は都市ガスでなくプロパンですから、煮炊きと暖房をかねる暖炉は必需品。「田舎はまっぴら、私はパリに残ります」と、移住に賛同しない妻はいません。わが国も老夫婦の田舎暮らしがふえれば、補助金なしで限界集落がなくなり一石二鳥かも。やっぱり大切なのは、アムールよね。