diary日 記 2024 / 05/ 01

ホテルが足りない、どうするパリ五輪

組織委員会の代表いわく、「パリ五輪」の不安要因は過激派テロだけと。たしかにテロがあったら、オリンピック史上初ですね。その心配とは異質ですが、実は会期中のホテル不足が深刻です。とはいえ宿泊施設については最悪の場合、寝袋もありますからどうにかなると誰もが考えるでしょうか。町中にこだわらなければ、どこかしらに空きベッドがあるはず。そもそも芸術の都、花の都と歌われるパリですが、町の規模はニューヨーク、東京やほかの国際都市とくらべて驚くほど小さいです。大昔の拙著、『パリ20区物語』に書いたように、町中を歩いて回れるのがパリの魅力にほかなりません。市内の総面積はなんと1万540㌶で、都内の山手線の内側とほぼ同じ。セーヌ川が東から西に貫通する楕円形したパリは、東西12㌔、南北9㌔しかありません。2019年の4月に炎上し着々と改修工事が進んでいるノートル・ダム寺院の正面に刻まれているO(ゼロ)地点から徒歩でスタートし、町中に点在する歴史建造物を徒歩だけで楽に制覇できます。といっても真剣に眺めたら、町のほぼ真ん中に位置するルーヴル美術館だけで数日は要しますから、面積が小さいといっても世界一の観光都市の地位は盤石。「パリ五輪」の期間、エッフェル塔を訪れる観光客数が1600万人と推定されるそうです。そうなると大小合わせて2千軒といわれている市内のホテルで、賄い切れる数ではありません。市内から郊外に出たイル・ド・ランス地区を超え、パリの中心から200㌔圏内のホテルの客室もすでに満杯。宿泊料金も高騰し、中クラスのホテルでも平常時の4~5倍。会期中はグレードの高いホテルから、埋まっていったとか。寝袋が置けるエリアを作った方がいいと、ジョークのような話が現実味を帯びてきています。

想定されていたホテル不足を補うために、昨年から注目されているのが俗にいう民泊。個人のアパルトマンや郊外の一軒家を、観光客の宿泊施設にするケースです。「パリ五輪」の期間だけでなく、今年だけでパリを訪れる観光客は1億人とか。彼らの需要を満たすために浮上したのが、民泊案です。そこで、さっそくパリに住んでいる旧友数人に、聞き込みを開始。もともと住居については、持ち家主義が彼らのポリシー。電話の相手を選ばなくても、私の親友たちの全員がプロプリエテール、つまり家主です。「アロー・ヨーコ・・・・・」と出てくれた懐かしい声とともに、スマホの向こうにいる友人の笑顔が目に浮かびました。四方山話はさておいて、オリンピック事情にことよせて民泊の誘いの有無を聞いてみました。「そうなのよ。昨年から郵便受けにチラシは入っていたけど、今年になって知人を通じてアパルトマンを貸す気はないかと打診がいくつかありました。もちろん友達にも、ほぼ全員にあったのよ。賃貸相場の5倍の提示金額に心が動いたけど、前後の片づけも大変だし、税金で1/3以上持っていかれるのでやめた。先方は保険に入るから安心だというけど、大切な家具を壊されたらイヤだしね。先回の東京オリンピックでは、どうだった?」 と、聞き返されました。あのときはコロナ禍の最中だったからといってごまかしましたが、日本人的な感性なら開催国でホテル不足はナシですよね。終わりよければすべてよしがフランス人の信条とはいえ、ちょっと気になります。テロ対策の検問所の横に、寝袋派のためのトイレが併設されるかもしれませんね。