diary日 記 2025 / 07/ 01

焼き型がないと作れない、ヨーロッパのお菓子

久しぶりにお菓子の焼き型を探しに、調理・製菓器具を扱う専門店が並ぶ<かっぱ橋>に参りました。お餅や餡を丸めたりねじったりする和菓子と違ってフランスのお菓子には、焼き型がないと作れない名物菓子が沢山あります。たとえばマドレーヌやフィナンシェ、カヌレなどをご想像ください。どれもメインのお材料はお砂糖とバター、玉子と小麦粉で、それにアーモンド・パウダーを加えたり蜂蜜を入れたりで変化を持たせながらも、焼き型が不可欠なお菓子が多々あります。マドレーヌ型がなければマドレーヌじゃない、カヌレ型がなければカヌレにならないといった、型から入るところに和菓子とのちがいが顕著ではないでしょうか。「いやいや、茶道や華道、陶芸が象徴するように、わが国の古典芸能は様式美である」といくらおっしゃられようと、ヨーロッパ諸国とわが国は生活様式がちがいます。
日本料理がそうであるように、わが国の太古からのお菓子作りも自然体。生地を真鍮製の焼き型に流して、オーブンで焼いたりしません。長時間かけて煮るのは餡にする小豆ぐらいで、お菓子を作るにも誠心誠意で手ごねや手びねり。大手デパート地下のお菓子売り場で見かける、<清浄歓喜団>を思い出してください。手のひらサイズで上部がひねってある、遣唐使が持ち込んだ唐菓子の原型のままのアレです。鎌倉時代に禅寺で作られていた饅頭もまた、手ごねです。新しもの好きな織田信長の時代あたりにオランダから渡来したカステラは、今では和洋菓子のカテゴリーに入るでしょうか。葛餅やきんつばなどのお菓子のほとんどが、道具いらずの手作りでした。羊羹を流して固めるための木製の箱はございましたが、お菓子の焼き型の出現は、今川焼や鯛焼きといった庶民派のおやつが登場した江戸時代末期といわれております。目の前で焼き上がるのが珍しいらしく、<かっぱ橋>の先、浅草界隈の今川焼や鯛焼き、人形焼き屋さんの前がインバウンドのおかけで大変な人だかりでした。